ブログでは久しぶりの記事です。
こんにちは、かまぼこです。
司法試験に合格したのは先日報告したとおりです。今回は、その試験の感触と採点結果(評価)の予想をしたいと思います。
結果通知書は9月15日(木)に発送されるとされており、これが正しければ、昨今の郵便事情を考慮すると、9月20日(火)に配送されると予測しています。
結果を見てからブログを書くのでは、結果通知に引っ張られたコメントになるかもしれないので、通知を見ていない時点での感触を記しておきたいと思い、書きました。
前書き(成績評価と点数の関係の考察)
令和4年司法試験の論文採点対象者数は2494人なので、A評価が従前どおり1000位までであれば、上位40%がA評価、41~60%がB評価、61~80%がC評価、81%以下がD評価となることが予測されます。
司法試験の採点方法について記載されている「司法試験の方式・内容等について」(令和3年11月22日司法試験考査委員会議申合せ事項)から考えると、評価の英字と点数の対応の目安は次のとおりと考えられます。
- A評価は100点~54点程度:上位40%
(採点実感でいう優秀~良好+一応の水準の上位) - B評価は53点~46点程度:上位41~60%
(一応の水準の中位) - C評価は45点~28点程度:上位61~80%
(一応の水準の下位~不良の上位) - D評価は27点以下:上位81%超
(不良の中位以下)
受験人数が減っても司法試験委員会は評価基準を変えなかったので、今年度も従前どおりのランク付けであった場合、E評価すら消滅した上に、「一応の水準」と評される答案でも、A評価が付く可能性がある状態なので、「A評価」とされた再現答案でも、内容を吟味しないといけない状態になっていると思われます。
さて、この評価方式が変わらない前提で、かまぼこの感触は次のとおりです。
※なお、令和4(2022)年司法試験では750点が最低点で、私は短答式試験で141点を得ているので、論文式試験では素点で348点が必要になります(348×1.75=609点なので)。
平均して44点、一応の水準の答案がひとしきりの科目で書けていれば合格できる点数になる計算です。「A~B」など幅を持たせても意味がないので、一点賭けで予想すると次のとおりとなります。
総論
【公法系】:80~90点
憲法C・行政法A
【民事系】:180点程度
民法A・商法A・民訴法A
【刑事系】:50~60点程度
刑法C・刑訴法D
【選択科目】:50点台
労働法A
【結果】
770点~800点の間、1103~1285位程度の合格と予測します。
※短答141+論文360×1.75=770から、短答141+論文380×1.75=800までの幅です。
各論
1 労働法
〇総評
A評価、50点程度の予想です。
論点外しをしていないこと、ローの演習科目でも良い評価を得ていたことから、比較的得意科目であり、他の科目との得点バランスを考慮すると、A評価程度を取れていないと合格しないと推測されることから、このくらいを予想しています。
労働法選択者なら共感すると思いますが、全体を見たときに、第二問に集団的労使関係の問題がないことにまず驚きました。
正直な感触としては、論点となる条文に迷う設問はなかったので、ひたすら規範定立とあてはめをしていくという、筆記作業に等しい問題で、「司法試験ってこんなものか」と誤った印象を植え付けられた、罠のような一科目目でした(次の憲法で恐ろしさを嫌というほど味わう)。
〇解答内容の要旨
- 設問1ー1
配置転換の問題なので、配転命令権の存否(就業規則の合理性)と東亜ペイント事件の要件に照らし、論述しました。
対象者が特殊資格職であったので、職種限定合意にも触れましたが、当然認めていません。 - 設問1ー2
雇止め法理の問題で、労契法19条に即して処理しました。 - 設問2-1
まず、賞与の発生原因を示した上で、労働協約の成立を否定しつつ、労使慣行を成立させ、労使慣行の就業規則による不利益変更、労使協定につき不利益合意可能の論点などを記載した。
労使慣行の判例について、「八戸ドライビングスクール事件」と記載してしまったが、正しくは「八戸ノ里ドライビングスクール事件」であった。 - 設問2-2
有期パート法の問題で、ハマキョウレックス事件を想起しつつ記載。
2 憲法
〇総評
C評価とは予想したものの、しょっぱなから完全なあてずっぽうの予想です。
実は、憲法については好きな基本書に出会えなかった上に、答案がどのように評価されるのかが最後までほぼわからず、最初から捨てていたに等しい状態でした。
いくらやってもよくわからないので、とりあえず人権の性質を論証パターン等で丸暗記して、無理やりに審査基準論を使い、あてはめで稼ぐ、点数は取れなくても極端に沈まなければそれでいい(それしか自分にはできない)、という感覚で司法試験当日を迎えました。
設問としては、県立大学教授に対して大学がした決定①(研究助成金の不交付決定)と決定②(不合格者の再試験実施)の憲法上の主張を大学側・教授側・私見の三者間で述べよ、というものでした。
〇参考にすべき判例について
試験当日の私の頭の中で、学問研究の自由及び教授の自由(23条)に関する判例は
- 富山大学事件
- 東大ポポロ事件
- 家永教科書事件
しか思いつかず。
問題文中に「司法権の限界については、論じる必要がない」とあったことから、富山大学事件が潰されてしまった上に、ポポロは学生側の事件で教授とは異なっていて使えない。家永教科書も、これはこれで検閲の文脈でしか捉えておらず…。
もはや、手持ちの判例は一つもありませんでした。
そこで、判例に言及せず(できず)に答案を書くという、不良答案まっしぐら、設問に従わない答案を書かざるを得ませんでした。
さらに、本問は処分違憲の内容であったことから、頭書に述べた審査基準論作戦を使うこともできず。裁量論の中で比較衡量する形で答案を書いています。
〇問題難易度について
今年の憲法は京大の曽我部先生も↓のように、難しすぎる旨を述べているので、受験生全体として答案が崩壊していると予測しています。
興味深いのは同感ですが、難しすぎですよね。給付の統制の話をどれほどの法科大学院で教えているのでしょうか。 https://t.co/GZXrGu2Qyg
— 曽我部真裕/Masahiro SOGABE (@masahirosogabe) 2022年5月16日
このような追い風(全体崩壊)を考慮しつつも、もともと崩壊レベルだった憲法のかまぼこ答案が評価されるとは思えず。30点程度の限りなくDに近いC答案と予想します。
3 行政法
〇総評
A評価ですが、50点台後半のギリAくらい予想です。
訴えの利益で条文を見落とすなどのミスはありましたが、特筆するほどの失敗はしておらず、得意科目というのもあって強気の点数です。
〇解答内容の要旨
- 設問1⑴
原告適格はEとF双方に認めました。
受験テクニック的には、2人出たら一人はあり、もう一人はなし、というのは知っていました。
しかし、私の頭では、どう考えても二人ともに原告適格があると思ったので、その思いをぶつけておきました。
※【20230718追記】
時機柄もありますが、多くの人に閲覧いただいているようなので、2人に原告適格があると思った点につき、当時の私の思考過程を補足しておきます。
問題文を読んで、「①開発許可区域内では土地の区画形質の変更が認められる。②なぜか分からないが他人(E)の土地を含めて開発許可が出てしまっている。③ゆえに、Eの土地は処分によって直接の影響を受ける。」という①~③のステップで条文を理解したためです。このことについては、水野泰孝弁護士(早稲田ローの行政法の教員)から以下のような指摘があります。
ただ、林地開発許可によっても、許可を受けた者に、開発区域内の他の者の土地を開発できるようになるわけではないことについては、もう少し親切に誘導してあげてよいのではとは思いましたね。制度として分かりづらいところだし、ここを誤解すると、その先で的を得た検討が難しい。
— 水野泰孝 Yasutaka Mizuno (@mizuno_law) 2022年7月6日では、本番の問題文の誘導を見てみましょう。誘導は、議事録の次の部分です(これで分かるが人いるのでしょうか)。
担当課長:本件許可基準では、法第10条の2第3項を踏まえ、同条第2項各号の要件を判断するために共通して必要となる一般的事項を定めています。森林法施行規則(以下「規則」という。)第4条第2号に関し、本件許可基準第1-1-①では、開発行為の完了が確実であるといえるかを判断するため、開発区域内の私法上の権原を有する者全てではなく、3分の2以上の権利者が現に同意していること等を求めています。本来、全員の同意が望ましいのですが、申請時には開発行為が許可されるか不明であり、申請者に過度な負担を課さないためです。この基準を前提に、Eの同意書が添付されていない現段階で本件開発行為を許可すると、法的にはどのように評価されるのでしょうか。
採点実感では、次のように、上記課長発言から、「開発許可があってもEの不動産への影響はない」と読み取らなくてはならないとされています。Eが本件開発区域内に土地を所有していること及び森林法施行規則第4条第2号の「開発行為の施行の妨げとなる権利を有する者」であることを理由に、本件開発行為により所有権を侵害されるとして原告適格を肯定する答案や「相当数の同意」を得ていることを証する書類の提出が求められていることを手掛かりにする答案が多く見られた。しかし、会議録における担当課長の発言からうかがわれるように、同号は、開発行為の施行につき相当程度の見込みがあることを要件にすることにより、事業の実現可能性を確認し、無意味な結果となる開発許可の申請をあらかじめ制限するために設けられているものと解され、開発許可をすることは開発区域内の私法上の権原に何ら影響を及ぼすものではない(最判平成9年1月28日民集51巻1号250頁も参照されたい。)。開発許可がされたとしても、事業地内の地権者の土地所有権等がそれにより剥奪又は制限されるわけではなく(開発許可は、都市計画事業認可や事業認定ではない。)、Eが同意しない限りE所有地内で開発行為がされることはないことに、留意してほしい。
少なくとも、私の読解力は不足していたので、上記記述から司法試験委員会からのヒントには気づきませんでした。もっとも、多くの答案がそう誤読したからこそ、このようなコメントが付いたのでしょう。正直、この部分は完全に森林法の条文解釈問題であって、これは森林法の試験ではない以上、明示的に示さないと誤解を招くのは仕方ないと思われます。自分が受けた年なので、自己弁護感がありますが。
なお、この件については、上記水野泰孝弁護士より追加のコメントがあります。
以前に指摘したことですが、今年の行政法・司法試験の問題は、「開発許可は私法上の権原に影響は及ぼさない」ことについての説明・誘導が不十分だと思いますね。採点実感でも、ややいいわけがまじく、補足されています(9頁上段)。 https://t.co/7xZGZT79yh
— 水野泰孝 Yasutaka Mizuno (@mizuno_law) 2022年11月4日 - 設問1⑵
訴えの利益は「B県法務室長(弁護士)」による誘導では、仙台市のビル建設事件が参考判例になっていたことが分かったので、仙台市の名前を出しながら説明しました。
もっとも、個人的にはこの判例よりも、市街化調整区域の開発完了後の開発許可取消しを求めた最判H27.12.14(CB13-10)を参考に考えた方が妥当ではないかと考え、この判例も説明しました。
答案上は訴えの利益を否定してしまったが、復旧命令(森林法10条の3)があるから取り消す意義が残存し、訴えの利益あり、と回答すべきだったと思います。本番では参考条文を一読したはずだが、完全に見落としてしまい、書けなかませんでした。 - 設問2
「B県法務室長(弁護士)」のしゃべる日本語が何を言っているか分からず、混乱して時間を浪費した。
想定される違法事由としては大きく3つで「Eの同意がない中で許可したこと(裁量基準外事情考慮の可否)」「行政権の濫用」「要件適合性」
ということで抽出して論じました。
なお、本問は「B県法務室長(弁護士)」のコミュニケーション能力の欠如(又は日本語能力の欠如)によって、かなりの難問となっている気がします。
次の囲みは、4頁最下部から始まる、裁量基準外事情の考慮に関する誘導(?)です。(【】内はかまぼこの感想)
Q(B県担当課長)
「Eの同意書が添付されていない現段階で本件開発行為を許可すると、法的にはどのように評価されるのでしょうか。」
A(B県法務室長(弁護士))
「想定する取消訴訟では、本件許可基準第1-1-①との関係が問題になりそうです。」
→【???。質問に回答しろよ。なぜ、突然取消訴訟を妄想し始める?】
「そこで」
→【どこで???前後のつながりは???】
「開発許可につきB県知事の裁量権が認められる理由や、本件許可基準に定める同意を要する権利者数以外に、本件許可基準に定めのない本件開発区域における所有林面積の割合を本件開発行為の許否の判断に当たって考慮することができないか、検討することにします。」
→【課長の質問に回答しろよ】
「なお、規則及び本件許可基準は適法であることを前提にしておきます。」
→【なお、課長の質問に回答しろよ】課長の質問に対してB県法務室長(弁護士)の回答がかみ合っておらず、悪文だと思っています。
おそらくですが、「同意書がなくても、あくまでそれは裁量基準を満たさないだけです。裁量処分である以上、基準外の事情を考慮して許可を出すことは適法です。」ということを言いたいのでしょう。
これをストレートに書くと受験生に論点がばれてしまうので、隠すように記載したのでしょうけど、あまりにも質問と回答が噛み合わな過ぎて、読解するのに苦労しました。
4 民法
〇総評
A評価60点程度予想です。
後述する刑事系の大幅なミス、公法系で点がさほど取れていない想定のため、民事系3科目は全Aで平均60点くらいとれていないと、合格水準に達しないことを踏まえての点数です。
細かく見ると、110条を持ち出さなかったり、554条に触れなかったりと、ちらほらミスってますが、大きな論点は出題趣旨のとおり書けていると思います。
〇解答内容の要旨
- 設問1⑴
94条2項類推適用を直球ストレートに聞いてきているということは一読して分かりましたが、未修1年生の期末試験のような設問が出るとはにわかに信じられず、考慮事情の見落としを何回か確認したくらいでした。
軽い論証では書き負けると判断し、懇切丁寧に記載することを決断。無権利の法理で権利主張できそうというところから、94条2項類推適用までの流れを2ページ目の中頃まで書きました。
なお、110条の適用関係については一切記載していません。すっかり失念していました。 - 設問1⑵
請求1は、これまた背信的悪意者からの譲受人に対する返還請求の可否というド典型論点で、これまた丁寧な論証を要すると判断し、177条の解釈・自由競争論による背信的悪意者排除・絶対的構成(背悪が対抗の問題で所有権自体があることを述べる)などをガッツリ書きました。
請求2は詐害行為取消の問題。詐害は要件解釈自体が複雑なので、自分の頭の整理も兼ねて、要件先出し方式で論述しました。
※要件先出し方式についてはTwitter上で議論がありましたが、別にどちらでもいいと思っています。
なお、請求1と請求2の結論がDのCに対する請求が、一方では認められないが他方では認められるというすわりの悪い結論になると思われますが、この点はスルーしました。
後日、ローの優秀な友人が、これに関する判例がある旨教えてくれましたが、そこまで書けた人は皆無では…? - 設問2
主張アは、賃貸目的建物の登記が移転Hに移転したから、605の2Ⅰにより賃貸人はHになるので、Fに賃料は支払わないとの主張としました。
主張イは、譲担が担保目的の所有権移転であって、本来の所有権移転とは異なるので605の2のⅠに当たらないとの主張。同項の趣旨を「賃借人が誰に賃料を支払うべきかを明確にするため(賃借人の便宜のため)に設けられた」とでっち上げた上で、登記上はHに移転する以上、この主張は認められないとしました。
主張ウは、主張イが認められない場合に605の2のⅡに該当するという予備的主張とし、譲担の場合に必ず賃貸人の地位移転が生じるとすれば、賃貸物件を譲担に出すことが困難になりかない旨を述べました。
本項適用にあたっては、留保条項はあるから、争点となる「譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意」の存否について、留保条項と譲渡担保契約の趣旨から解釈として使用貸借契約があるとした上で、ゴリ押しで605の2Ⅱに該当する旨を述べたました。
- 設問3
結構時間が押してきていて、かなり尻切れトンボな論述をしました。
主張エは、遺言の撤回及び抵触行為(1022・1023)の主張ということが明らかだったので、これを指摘した上で、死因贈与「契約」と遺言との違いをつらつらと述べ、最後はマジックワード「死者意思の尊重」を持ち出して、主張を認めた覚えがあります。
なお、死因贈与に関する554条の存在を私は知りませんでした。ローの授業ではやったと思うのですが、試験当日の私の頭の中には完全に存在しない条文でした。
5 商法
〇総評
A評価50~60点程度予想です。
民事系3科目の中では、一番成績が悪そうな感覚です。一応、出題趣旨のとおりの論点は拾っているものの、設問2と3の記載内容(特に設問3)はあまりよく書けていないと思います。
〇解答内容の要旨
- 設問1
339Ⅱによる損害賠償請求の問題として、いつでも「正当な理由」の有無について述べました。
「損害に関する主張」と「その当否」、とわざわざ記載していること(設問2の記載ぶりからしても明らか)から、損害についてもその範囲について論述をしっかりしました。
商法の過去問では、具体的金額が出ている場合に、損害金額をしっかり記載すべき旨の採点実感があることから、無理やり計算して記載しました。しかし、ものすごく汚い金額になったので、おそらく報酬〇か月分とか、そのような記載でも良かったかもしれません。 - 設問2
任務懈怠責任の問題として、経営判断原則に照らして書きました。
利益相反関係等については特に書いた覚えがなく、純粋にアパマンショップ事件に照らし、記載しました。 - 設問3
民法と同じく、時間が押していたことに加え、商号続用責任(22Ⅰ)についてである旨は分かったものの、同条に関しては「新」という文字についての解釈しか心当たりがない状態という緊急事態でした。
とりあえず、ひとしきり問題文の事情を述べた上で、条文をほぼナマのまま適用してお茶を濁して終わりでした。
6 民訴
〇総評
60点程度でA評価予想です。
仮に上振れがあるとすれば、この科目だと思います。
〇解答内容の要旨
- 設問1
課題1はいやらしい問題でした。当事者確定については、(実質的)表示説、行動説、規範分類説を採っても被告は乙となってしまい、甲になりません。(メジャーな説では)意思説を採らないと被告が甲にならず、意思説と他説の論述が求められるところ、意思説なんて知らねぇ、というところが実にいやらしい。
課題2は自白の問題で、ここは全員が絶対キッチリ書いてくると思った。また、勅使川原先生から「テクニカルタームは絶対に説明をしろ。テクニカルタームをそのまま使うのは、定食屋で塩サバ定食の注文に対して、塩振ったサバがそのままぶん投げられるようなもんだ。ちゃんと三枚におろして焼いて、皿に乗っけて出してくれ!」
と強く教えられたことを思い出しつつ、解釈論を述べました。 - 設問2
最判S62.7.17の4要件を踏まえ、主観的追加的併合ができるように立論せよ、という設問で、4要件が問題文中に明示されている問題なので、ほぼ作文の時間でした。
Gテック(甲)とMテック(乙)は実体法上、法人格否認されうる状態にもかかわらず、主観的追加的併合ができなければ、訴訟法がこのような背信的な会社設立を追認するような形になりかねず不当だ、みたいな論調で述べましたね。
なお、4要件を検討する前に、同種手続き・併合禁止でない・管轄がある、という請求の客観的併合要件(136)を要することについて、3行ほど軽く書きました(被告の普通裁判籍の条文(4Ⅳ・会社4)など)。設問は主観的追加的併合の可否なので、4要件以外の併合要件も書けるのでは、と加点を狙いましたが、余事記載かもしれません。 - 設問3
今回の試験で最大の作文コーナーでした。
「文書とは?」という問いで、全く考えたこともなかった質問でしたが、こういう場合はこじつけでもいいから必ず条文に紐づけて考えを示すべきだろうと考えました。
そこで、「書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。」(219)を示した上で、書証は書面から裁判官が心証を形成するものである以上、「文書」はそのものから裁判官が文字などによって心証形成ができる性質の媒体である旨を論じ、USBはそれ自体では可読性がなく、内蔵データによって心証形成する以上「文書に当たらない」としました。
なお、「この種の記録媒体の取調べは書証によるべきであるとの見解」に立つ、という立場指定があったことから、内蔵データを印刷して可読性のある文書として申し出ればよいのではないか、との反論も書きました。
これに対し、データ自体には作成日時などのプロパティ情報があり、印刷してしまっては当該データは参照できなくなる以上、USBの内蔵データを印刷物ではなくデータとして取り調べる必要性がある、とその場の判断で再反論をしておきました。
この反論・再反論は、大阪地検特捜部の検事がフロッピーディスク内のプロパティ情報の文書作成日時を改竄していた事件(村木厚子さん冤罪事件)が頭をよぎったことで思いついたものです。
これは余談ですが、219条を用いようと思ったのは、勅使川原先生が地団駄を踏みながら説明していた情景が、試験中に思い浮かんだからです。
「いいか、証拠は、”申し出る”ものだ(ドン)! ”申立て”ではない!(ドン)」
7 刑法
〇総評
やってはいけない重大なミスをやってしまいました。試験時間を2日目の日程と間違え、12:00に終了すると勘違いしました。
結果、「盗んだバイクで走りだす」という尾崎豊パートの部分は、後述するとおりほぼほぼ何も書けていません。
当該部分が30点程度と予測されること、刑法はそもそも得意でもなければ苦手でもないものの、書き負けることは覚悟しているので、残部70点のうち、半分の35点程度、あわよくば40点程度の点がついて、C評価になるのが関の山だと推測しています。
〇解答内容の要旨
- 設問1
振り返ろうと思ったのですが、時間ミスの衝撃があまりにもひどかったようで、本当に自分が何を書いたかあまり思い出せずにいます。
少なくとも、⑵では利用処分意思の要否を述べ、財産犯である以上、毀棄罪とは異なり利用処分意思を要する、みたいなことをフワフワっと書いた覚えがあります。
問題文の指定で「簡潔に論じなさい」とあったことから、2問で1ページと3~5行で終わらせました。 - 設問2前段(乙の誤想過剰防衛パート)
ザックリ言うと、”乙は甲が正当防衛状況にあると誤信して、Aに対し攻撃をしたところ、客観的には甲とAはけんか闘争中であり、乙はけんかに加勢したにすぎない”という事案だと把握しました。
解きながら、「甲が正当防衛状況にあることが、乙について何の関係があるのか」という疑問がわきつつも、明らかに甲について正当防衛状況を平成29年決定をもとに論述してほしい問題文であったことから、その誘導に従いました。
甲が正当防衛状況にないにも関わらず、乙はこれを誤信して、内心は正当防衛(他人の利益を守るため)の意思で行為している以上、誤想防衛であることを論じ、過剰性の認識があることから、過剰防衛とし、36Ⅱの論証に流しました。
ここまでで、主観的には残り30分あったので、「今日めちゃくちゃ筆の調子がいいな、これは行ける」とか思ってました。 - 設問2後段(尾崎豊パート)
時間の余裕があったので、誤想過剰防衛をしっかり目に論述しおわり、意気揚々と本パートに移り、行為を特定し、窃盗罪を検討する旨を記載。
原付の所有者のDは飲食物配達業務のため、鍵付きでマンション内に立ち入っていた事情があったので、占有の論点が書けると考え、「占有が問題となる」と書いた瞬間でした。
パタパタパタ、パサッパサッ、コロン
急に、周囲が、聞き覚えのある音で、にわかに騒がしくなりました。
試験中に私が聞いた音。
それは、周囲の受験生が答案用紙を表紙に戻し、問題用紙を閉じ、ペンを机に多少乱雑に置く音。
試験終了の時刻がすぐ近くに迫る音でした。
この音が最初に聞こえたとき、たまたま早く終わった一人だと思いました。
しかし、自分の周囲の360度から聞こえる映画館さながらの臨場感溢れるこの音は、どう考えても試験終了間際です。
すぐに時計を確認したところ、やはり、まだ30分ありました。
次に受験票を見ました。試験終了1分前を切っていました。
私は、驚いたときに心拍数が上がる人間ですが、今回ばかりは驚きが許容量を超えたらしく、血の気が引くような感覚と共に、「今から何が書ける」と冷静に思案していました。
答案構成用紙には、乗り捨てのため不法領得の意思の有無、自招危難と書くことがまだまだ残っていましたが、これらを1分以内に書くことは不可能です。
「窃盗罪成立」
最後の行に、震える字でこう書いたところで、「試験終了です」との宣言。
「以上」すら書けずに終わりました。
試験終了後、茫然となり、解答用紙を一枚目に戻すこともできず、回収係員に促されて、やっと解答用紙をもとに戻した記憶があります。
民事系3科目は主観的には好調であったため、一気に奈落に突き落とされ、不合格の文字がよぎると同時に、次の科目でなんとか挽回しなくては、頭の中が混乱し始めましていました。
8 刑訴
〇総評
D評価、20点程度の予想です。
内訳は設問1は凡庸な答案なので、50点の半分の25点程度、設問2は後述するとおり、ありえない誤読をして0点の想定です。
もともと刑訴はTKC模試でも下位85%超という底の評価をもらうなど、苦手意識がある科目でした。さらに、直前の刑法でやってはいけないミスを犯し、内心かなり憔悴した状態で試験を受けていました。
TOCの屋上で、同じローの同級生と会話するのが休憩時間のルーティンでしたが、刑法刑訴間の休み時間、屋上に行きはしたものの、一言も発さず、必死に論証集を眺めていました。
同級生から
「かまぼこさん、やっぱ刑訴苦手なんですね。いつもはあんだけ饒舌なのに、この時間は一言も発さないんですもん。」
と言われたのが妙に記憶に残っています。
〇解答内容の要旨
- 設問1
おとり捜査をサンプル回と10kg回の2回に分け、おとり3要件を述べつつ、論じました。特筆するところはないです。ないからこそ、点があまり拾えていない予想です。 - 設問2
事実9の末尾で「裁判所は結審した」とあり、結審した以上は訴因変更の段階は終了しており、このままの訴因で資料2の判決が可否を問う問題、すなわち概括的認定の可否の問題と捉えて回答しました。
また、「罪となるべき事実の記載が判示として十分かについて論じる必要はないとする」部分を、何をどう誤読したのか、訴因変更については論じる必要はないと誤読。
当然のことながら、本問で訴因変更に関する平成13年決定は一切触れていません。
結果として、設問2の1も2も、全く同じ論述をすることになりました。2で事実が追加されても、この考え方だと論述に何ら影響がありません。そんなわけない、と頭では思っていましたが、混乱したまま時間が過ぎていきました。
もはやこれまで、という時間になって、概括的認定の話を書き、出題者の意図することはほぼ何も記載せず、「認定できます」と両方とも書いて終わりです。
こんなん、点なんてつかないですね。0点でしょう。
結びに
結果が届いたら、また更新します。
短答の結果通知が午後便で届いたことを考慮すると、9月20日(火)の午後のような気がしますが、果たして。